渇きを潤すかのごとく、私はむさぼるようにある本を読んでいる。
私がこの本に出会ったのは、たしか私が16,7歳ぐらいだったと思う。あれから15年以上の月日が流れ、また私はあの本のあの世界に引き込まれている。
私がこの本に最初に引き込まれたのは・・・・主人公の言った言葉だった。
その言葉は、私にとって、”Déjà vu”だった・・・。だれかが、その本に出逢う3,4年前に言った言葉だった。
「どうしてそんなに固く物事を考えるんだよ?ねぇ、もっと肩の力を抜きなよ。肩に力が入ってるから、そんな風に構えて物事を見ちゃうんだ。肩の力を抜けばもっと体が軽くなるよ」
同じ言葉を、今の私にも言ってくれる人がいる。
その言葉に当時の私は本と全く同じようにこたえた。
「肩の力を抜けば体が軽くなることくらい私にもわかっているわよ。そんなこと言ってもらったって何の役にも立たないのよ。ねえ、いい?もし私が今 肩の力を抜いたら、私がバラバラになっちゃうのよ。私は昔からこういう風にしてしか生きてこなかったし、今でもそういう風にしてしか生きていけないのよ。 一度力を抜いたらもうもとには戻れないのよ。」
今の私は、すこしだけ力を抜いてみようと考えている。
「信頼」という言葉を見つけたから、すこしだけ力を抜いてみようと思う。
ほんの少しだけでも、力が抜けた時、
「自分の写真」
撮れることを知ったから。
肩の力が抜けなかったあの人は、自らの命を絶った。
力が抜けなかったんじゃない、あの人は肩の力を抜いてみたんだ。
そしたら、彼はバラバラになっちゃって、どこかに吹き飛ばされてしまったんだ。
あの人が私を必要だと言ってくれてたら・・・そんなことも考えた。
でも、彼は深く混乱していた、そして言葉も失いつつあった。
彼が死んだ時、私の中で何かが彼と一緒に消えてしまったことに初めて気付いた2008年の春。
明日、あの人に会いに行く。
彼はずっと29歳のまま。
残されたわたしたちだけが歳をとっていく。
外は雨が降っている。
私の乾いた心を潤そうとするかのように
雨が降っている。
もう一度あいたかった
はなすことがたくさんあったから