窓の外を見ると、とても大きな工場が見える。そして、その工場の周りには本当に数え切れないぐらいの車が止めてある。きっと工場で働いている人達の車なのだろう。
私以外の世界では、皆仕事をしているのだ。不思議な感じだった。
私は何かを忘れてしまっているのではないか、とても大切な何かを忘れてしまっているようなそんな不安に駆られる。
ふと足元をみれば、着替えと歯ブラシとカメラとそして切符が入ったバッグ。
そして、我にかえる。
そうだ、私は旅をしているのだった。そう思い出し、シートに座りなおす。
今は忘れよう、今はただ、今ここにしかない、今出来ることだけに神経を集中させ、今を楽しむのだと、自分にいいきかす。